運用の妙は一心に存す

 記事タイトルは、『宋史』岳飛伝にある言葉です。「戦術を学んでも、それを臨機応変に活用するのはその人の心一つにかかっており、ただ学び覚えただけでは役に立たない」、そのような意味だそうです。
 私は歴史に詳しくないので、正確な事は他をあたって調べて頂いたほうがいいと思いますが、岳飛は中国南宋の武将で、上記の言葉は、彼が若い時に師との問答の中で発した言葉だそうです。なんだかすごい人ですね(^^;;。

 私はあまり外食を好みません。もともと引きこもり体質なもんで(苦笑)。ただ、ここ一、二ヶ月、よく遠出をしましたので、自然と外で食事をする機会も多くなっていました。
 最近は、店に入ると店員さんが客の人数をきいて席に案内する、というところが多くなりましたね。まあ、席に案内してもらう、と言うか、強制的に席を割り当てられる、と言うか…(笑)。
 窓際の明るい席が良い、という人もいれば、奥まったところの方が落ち着くので好き、という人もいるでしょう。一人だけど、もし空いているならテーブルを一つ使いたいという時もあるし。そのためにわざわざ混む時間を避けたり、なんて人もいると思います。客の要望もそれぞれなので、店の都合ばかりを押し付けられてもねえ。
 …なーんて思っちゃったりするんですが、ワガママが過ぎますかね(^^;;?でもまあ、私は店員さんの案内を無視した事はないですけどね。

 ただ、先日、とある居酒屋に入った時、店員さんの案内の仕方に少し疑問を感じた事がありました。
 「タバコはお吸いになりますか」と訊ねられたので、「いいえ、吸いません」と答えたのですが、「ではこちらへ」と案内されたのは、ものすごい勢いでタバコをふかすお客さんの近くの席でした。何それ。まあ、その時は時間的にもう真夜中近くて、飲み食いは軽く済ませて早く帰って寝たかったので、そのまま黙って案内された席につきましたけど…。
 あの店員さんは何のために「タバコを吸うか」と訊ねたのでしょう。私はタバコは吸わないし、吸わされるのもイヤなので「吸わない」と答えたのですがね。私、一瞬マジで(この店員アタマおかしいんじゃねーの)って思っちゃいましたよ(^^;;。
 その居酒屋は、日本全国のみならず海外にも飲食店を出店している企業が各地でチェーン展開をしているお店のうちの一軒でして…、まあ、他所ではこんな事はないと信じたいですが。

 ファミレス等の飲食店での型にはまったマニュアル通りのサービスについて、私は、あまり心地よくは感じていませんが、頭ごなしに否定するつもりもありません。あまり手数をかけさせるというのも申し訳ないと思うので、店員さんの指示・案内には従っています。
 ただ、接客マニュアル記載の項目をいつも型通りに適用して処理していく、という接客法はとても幼稚な物で、プロとしてお給料をもらえる仕事ではないと思います。
 上記の、私の経験したケースでいえば、できれば「禁煙」という条件をもう少し重要視して欲しかったです。完全無視、てのは悲しかった。禁煙席と喫煙席とを完全に分けられなくても、少し距離を離す配慮をしてもらえれば、私もこんなに根に持たないですよ。あるいは、店内の空調設備について把握し、距離が近くてもタバコの煙の流れにくい席へ案内されたりしたら、逆に高評価しちゃうけどなー。

 「運用の妙は一心に存す」。岳飛の言葉は、血で血を洗う戦場以外でも生かせるのではないでしょうか。マニュアルに羅列された無味乾燥な文章をただ暗記しても役に立たない。そこからプロの接客を生み出すのも、やはり人の心の一つ、ではないでしょうか。